北方、シラー国との国境では一触即発のにらみ合いが続いていた。
国王交代の時に乗じて領土を広げようとするシラーは、ザンジュールの動向に目を見張っているようだった。進撃の声があげられるその時がじわりじわりと近づいているようだった。
一方、ザンジュール国内でも、表立って行動はしてこないがブリミエルらの
反国王派であり、権力を手中におさめようとする者たちが弟皇子を担ぎ上げようと暗躍を始めていた。
そしてザンジュール国王は、王位を譲位する時期を静かに見計らっていた。
フランツは思案の中にいた。
このザンジュールの平安を守るため、まずは内側から反勢力を取り除き、強固なものとしたい。だが、表立って行動してこないブリミエルらを捕らえるには明白な証拠がなかった。
越境する構えのシラー国については、自分が軍を率いて制圧に向かえば今の段階であれば即刻解決するだろう。
代々国王がその団長を務める、純白のザンジュール騎士団を率いて国境を制圧し大義を上げれば、喜びに湧き上がる国民の賞賛を受け戴冠式を迎えられるだろうと思われる。それは新国王としての権威を不動のものとするだろう。
≪しかし、、≫
今、この城を離れて遠征にゆけば、反対派のブリミエルらが企てを起こさないとは考えにくい。
どちらにも行動を起こすには危うい現状だった。
シラーとのにらみ合いが切迫してきているという、エルロイ卿からの知らせに再び目を落とす。
フランツは両手を握りしめた。
コンコン、執務室の扉が叩かれた。
「入れ。」執事が顔をのぞかせる。
「皇子様、レデオン卿とウェルスター卿がお目通りしたいと参っております。
まだお時間が早いようですが、いかがいたしましょうか?」
「わかった、会おう。こちらへ通してくれ。」
執務室の窓の外には朝もやが広がっている。
シラー国との状況が切迫してきていることで駆け付けたのだろうか。
それなら早朝の早すぎる訪問も納得がいった。
間もなく二人が通されてきた。
フランツは話が終わるまで誰もとりつがないようにと言い、執事に扉を閉めさせた。
「それで、こんな早くからどんな早急な話なのか、レデオン卿。」
一礼して姿勢を正したレデオン卿はフランツのそばへ一歩より、小さな声でささやいた。
「皇子、リネ姫さまのことでお話が。」
フランツは表情には出さなかったが、内心驚いていた。
この忠臣が国家の一大事ともいえる事柄がくすぶるなか、それらよりもディアナのことを持ち出すとは思ってもみなかったからだ。
「どういうことだ?」
「はい、ぜひお近くで。」
フランツは頷いて、隣に用意された円形の小さめのテーブルに移るよう指差した。
フランツとレデオンが向き合うように椅子に腰かけ、ウェルスターは彼らの間で片膝をついた。
国王交代の時に乗じて領土を広げようとするシラーは、ザンジュールの動向に目を見張っているようだった。進撃の声があげられるその時がじわりじわりと近づいているようだった。
一方、ザンジュール国内でも、表立って行動はしてこないがブリミエルらの
反国王派であり、権力を手中におさめようとする者たちが弟皇子を担ぎ上げようと暗躍を始めていた。
そしてザンジュール国王は、王位を譲位する時期を静かに見計らっていた。
フランツは思案の中にいた。
このザンジュールの平安を守るため、まずは内側から反勢力を取り除き、強固なものとしたい。だが、表立って行動してこないブリミエルらを捕らえるには明白な証拠がなかった。
越境する構えのシラー国については、自分が軍を率いて制圧に向かえば今の段階であれば即刻解決するだろう。
代々国王がその団長を務める、純白のザンジュール騎士団を率いて国境を制圧し大義を上げれば、喜びに湧き上がる国民の賞賛を受け戴冠式を迎えられるだろうと思われる。それは新国王としての権威を不動のものとするだろう。
≪しかし、、≫
今、この城を離れて遠征にゆけば、反対派のブリミエルらが企てを起こさないとは考えにくい。
どちらにも行動を起こすには危うい現状だった。
シラーとのにらみ合いが切迫してきているという、エルロイ卿からの知らせに再び目を落とす。
フランツは両手を握りしめた。
コンコン、執務室の扉が叩かれた。
「入れ。」執事が顔をのぞかせる。
「皇子様、レデオン卿とウェルスター卿がお目通りしたいと参っております。
まだお時間が早いようですが、いかがいたしましょうか?」
「わかった、会おう。こちらへ通してくれ。」
執務室の窓の外には朝もやが広がっている。
シラー国との状況が切迫してきていることで駆け付けたのだろうか。
それなら早朝の早すぎる訪問も納得がいった。
間もなく二人が通されてきた。
フランツは話が終わるまで誰もとりつがないようにと言い、執事に扉を閉めさせた。
「それで、こんな早くからどんな早急な話なのか、レデオン卿。」
一礼して姿勢を正したレデオン卿はフランツのそばへ一歩より、小さな声でささやいた。
「皇子、リネ姫さまのことでお話が。」
フランツは表情には出さなかったが、内心驚いていた。
この忠臣が国家の一大事ともいえる事柄がくすぶるなか、それらよりもディアナのことを持ち出すとは思ってもみなかったからだ。
「どういうことだ?」
「はい、ぜひお近くで。」
フランツは頷いて、隣に用意された円形の小さめのテーブルに移るよう指差した。
フランツとレデオンが向き合うように椅子に腰かけ、ウェルスターは彼らの間で片膝をついた。