好きとか絶対ありえへんっ

「別れよう」


君の口からいきなり出たそんな言葉。


「え、なんで…?」


なんでなんでなんで??


あたしなんかあかんかった…?


「ごめん、もう限界やから」


なにが…?


いきなりのことにあたしはテンパる


「さようなら。」


最後に悲しい言葉を呟いて去っていった彼氏。


今ではもう元彼になるんかな…?


大好きやから、止めにいくはずやのに、なぜかあたしの足は動かずに、固まっていた。



「なんで?なんで?なんでなんでっ…」


理由もわからず、振られた。



「ううぅ……ひくっ…」


あたしはその場で泣き叫んだ。


それからあたしと彼は関わることなく…


振られた理由もわからず高校生になろうとしていた…





多分、これから先、あたしたちの関係はずっと変わらんと思う


けど、たまにあいつは甘い






「ん……」


目を覚ますと、教室がさわがしかった。


…今何時やろ?


「歩夢ー!やっと起きたん?


歩夢朝からいままでずっと寝てたで?


もう今お昼休み」


あたし学校来てそんなにすぐ寝たっけ?


そういえば授業受けた記憶ないや。


で、今はお昼休みか


…ん。ん?

「お昼休みーーーーー!?」


あたしの叫び声が教室に響き渡る


おかげであたしはクラスの笑い者


「もー、歩夢あんた声でかすぎ。


それよりも寝すぎ

はよご飯食べるで」



「はーい」



あたし、川瀬歩夢(Kawase Ayu)は生まれも育ちもバリバリ関西の高校1年生



今日は高校1年目の夏休みが明けて平常授業が再開した初めの日



だいたいいつもどれかの授業は寝るけど、まさか4時間も寝てしまうなんて…
「もう、歩夢が起きるの遅いせいで全然ご飯食べる時間ないからな。


はよ食べんでー」



「うんごめん」




そして、あたしが今話してる相手は中学の時からの親友の山口奈美(Yamaguchi Nami)




サバサバしてて、めっちゃ明るい



身長は160後半で焦げ茶のロングヘアは、染めてるのに全く傷んでなくて、前髪はぱっつんでほんまに可愛い。




ちなみに奈美にはラブラブの彼氏がいて、まさに理想の高校生。



それに比べてあたしは頑固で強がり


ちなみに身長は165。髪は金に近い茶髪で、奈美よりもロングヘア。前髪は左右に振り分けている



あたしたちは世間一般から見たらギャル。



見た目がキツイせいなのか、中学の時はあたしたちに近づいてくる女の子は少なかった



常に二人で行動してた感じ。今もやけど


よく男と遊んでそうとか噂されるけど、あたしは一人の男がずっと忘れられへん。

「なあなあ、今日一緒に帰られへんわ。ごめんな


幸希と一緒に帰ることなってんねん」


奈美は卵焼きを食べながら頬を緩ます。


奈美の言っている幸希とは、奈美の彼氏のこと


斎藤幸希(Saitou Kouki)君は、サッカー部で、まさに爽やか青年って感じ

確か中学二年生の時に幸希君が奈美に告白して付き合った



イケメンの部類に入るけど、奈美とのラブラブ度は、見てるこっちも恥ずかしいぐらい。


だから、誰も奈美にも幸希君にも告白せえへん


「ん、了解」




「歩夢は坂下君と帰れば〜?」


奈美はお弁当を食べ終わったのか、机の上にお菓子を出しながら言う



「絶対嫌や。


いっつもあたしの言うことにつっかかってくるし」



奈美の言う坂下君とは、坂下拓人(Sakashita Takuto)のこと。


小中高と一緒で腐れ縁のようなもの。


小学校のときはちびで泣き虫だったくせに、今は身長も伸びて髪も茶色に染めてて、制服は着崩しまくり。



おまけにピアスは少なくとも3つは空いている



それに中学三年生から無駄にいけめんになった。


拓人が廊下を通ると、女の子たちは黄色い声を漏らす。



確かにかっこいいことは認める。




やけど惚れる意味は理解不能


あんなやつ好きとか言う意味がわからん
「そんなめちゃくちゃに言ったりなや


けど坂下君ほんまにモテるよな〜」



奈美と思ってたことが見事に同じ。


「あたしも今それおもってた



お陰で中学の時は拓人のこと好きやった子たちから冷たい目でみれるし



そんなん高校になってまで嫌や」



中学の時、あたしから拓人に話しかけてるわけじゃないのに、勝手に女子たちが勘違いして、一人だけ拓人に媚び売ってずるいとかよく言われた


別にそんなんで落ち込むようなあたしじゃないけど



コソコソ話されてることにイライラして彼女たちを睨めばビクッと肩を震わしてよく逃げて行ってた気がする



逃げるんやったら初めっから言わんかったらいいのにっていっつも思ってた



「まあまあ落ち着いて


坂下君がかわいそう

あんまり嫌がったらんといたりや〜」


「拓人がかわいそうとかどうでもいいわ」



「はいはい」


あたしが即答したのを聞いて、奈美は諦めたように呟いた
「だからここにxを代入して答えを求めるんやで〜」

…今はつまらない数学の授業


黒板には全くわけのわからない数式が並んでる


あたしは窓側の一番後ろとゆう一番最後なポジションに席がある




ノートを取る気にもならず、あたしは窓の外を眺めていた




あーあ


春馬は今何してんのかな…



あたしはいまだに初恋を忘れることができひん



春馬ってのは、中学時代半年付き合ってた彼氏




別れた原因は、未だに謎。


ただ、別れようとだけ言われて、それから全く話さんくなった。



けど、あたしと別れてからの春馬はどんどん女遊びが激しくなって



毎日違う女と一緒におるのを見てたらほんま嫌になってきて



みんなの前で泣くのは絶対に嫌やから、よく屋上とか自分の部屋で泣いてたのを覚えてる




あれから一年以上経ったのに春馬のことまだ好きとか、ほんまに重い女


春馬のことを考えてたら自分のことほんま嫌になってきた



ポンッ


春馬のことを考えていると、あたしの頭に何か当たった



「いった」


なんやろ…


床を見渡してみると、そこに落ちてたのは見慣れた消しゴム。


またか


薄々あいつやとは気づいとったけど



「痛いねん!あほ拓人!」



あたしは前の席に座る拓人に消しゴムを投げ返す



最近は消しゴム投げてくることなく大人しく授業受けてたくせに、なんで今日に限って投げてくんねん





「お前が泣きそうな顔してるからやん



見てるこっちも気持ちどんよりしてきていい迷惑やわ!」


「は?


じゃあ後ろ向かんかったらええやん!


あんたが後ろ向かんかったらあたしの顔なんか見んでええやんか!」



あー、この会話久しぶり



ここ二週間ぐらい拓人があたしに構ってくることなかったのに



「それはっ……


後ろから気持ちオーラ出してるからやんけ!」


…こんなめちゃくちゃな言い訳をできることが逆にすごい



「おかしいやろ!


そんなめちゃくちゃなこと言わんといて!」