好きとか絶対ありえへんっ

あたしは奈美に引っ張られるがままに屋上に行った。


この時期は寒いから屋上の日の当たるところに2人で座る


「で、何があったん?」


「あんな…ーーー」


あたしは昨日の出来事を全部話した。


昨日拓人が用事ができたとか言って先に帰ったこと。



もう登下校を一緒にできひんって言われたこと。




「そっか…」


「あたし、どうしよう…」




もう学校行く気力が半分無くなった気がする。



「坂下君と1回ちゃんと話したほうがいいと思う


あたしほんまに歩夢のこと応援してるから


まだ諦めんと頑張ってな?」



「奈美ありがと〜!!!」


あたしは奈美に抱きついた
「ちょっと!



首締まる!!」



そう言いながらもあたしの背中に手を回してくれる奈美。


ほんまに奈美が親友でよかった


ーーーー



あたしたちは1限目だけさぼってすぐに教室に戻った


運良く今日の1限目は自習で先生はあたしたちがいないことをあんまり気にしてなかったらしい。



そして迎えた昼休み。


あたしは拓人と話すために拓人の後ろに行った




「拓人!!!」




あたしが拓人を呼び止めると拓人は無言で振り向いた
拓人のこの目、夢で見た白い目と似てる…



「あの…拓人と話したいねんけど…」



「何?お前俺のこと好きなん?」



「…っ」


いつもは意地悪やけど笑って言ってくれるセリフを今日は真顔で言われて、はじめて拓人が怖いと感じた



「好きとか絶対ありえへんっ


やろ?」



ちがう!ちがう!


「ちが…「もう思わせぶりな態度とんなや。



俺とお前はもう赤の他人。


じゃーな。」



拓人はあたしの言葉を遮り、淡々と冷たい言葉を残して去って行った



この瞬間、あたしの心の中の何かがバラバラに崩れた気がした。
俺には好きな女がおる


それは川瀬歩夢


いつからって聞かれたらわからん


気付いたら好きになってた。




結構明るい色に染めてるのに全然傷んでない髪とか



明るくて笑ったら目尻が下がって最高にかわいいところとか



気強くて、あんまり泣かんくせに恋愛に関わることなら結構涙もろいところとか



言いだしたら止まらんぐらい歩夢のことが好きで好きで


自分でもキモイって思うぐらい歩夢のことが好き。
小学生の時は、親同士が仲良いこともあって俺が一番歩夢と喋ってたから、正直安心しきってたんやと思う。



時間がかかったとしても、歩夢はいつか俺の女になるって。


そう思い込んでた



だから、中学生になってから、歩夢に報告された時、その場で泣きそうになったことを今でも覚えてる。



あたし、春馬君と付き合うことになった



頬を染めてそう言われた時。



その時ほんまに後悔した。



なんで早く、ちゃんと俺の想い伝えへんかったんやろうって。




もう俺には歩夢に想いを伝える権利なんてない。



だから、歩夢への想いは心にしまうことにした
今まで通り、普通に友達として、話したりふざけあったりする



そうゆう関係やった。


けど、俺にはその関係が1番辛かった


そしてある日の理科の授業中




俺の担任のがいきなり教室に入ってきた。



「坂下!!



お前のお父さんが倒れたそうだ!


学校早退して今すぐ病院へ向かえ!」


親父が倒れた…?


「は…?」


確かに持病は昔から持ってたけど、倒れたりすることは今までなかった



「とりあえず、病院へ向かうぞ!」



「…は、はい」



俺は教室を飛び出した
先生とタクシーで向かった先は近くにある大きな病院


ついたら俺たちはすぐに降りて、親父の病室へと向かった


「親父…?」



病室へ入ると親父の顔の上には白い布が被されていた。



そしてベッドの横で声を殺して泣いてる母親



この時、すぐに状況を飲み込むことができた



ーーー親父が亡くなったって。



俺は現実に耐えられずに、病室を出てすぐそばにある椅子に座り、静かに涙を流した



しばらくしてから誰かの足音が聞こえた。



「拓人…っ」



名前を呼ばれ顔を上げると俺以上に泣いている歩夢が目の前にいた



多分親父が亡くなったことはもう聞いたんやと思う



歩夢は俺の横にそっと座り何も言わずに俺の背中を優しくさすってくれた



その優しさにまた涙が込み上げてきて。



俺はしばらく泣き止むことはなかった。



親父が亡くなった日は木曜日で、お通夜や、葬式があって、金土日はほとんど寝ずに過ごした



月曜日からは学校に行ったけど、友達の話も授業も全然頭に入ってこうへんかった。




多分この時の俺は抜け殻みたいやったと思う。



それから二ヶ月ぐらい経ったある日



俺と歩夢は日直で教室に残ってた

「「…」」

日誌を書いている俺たちは無言



けど、歩夢が口を開いた


「お父さんがおらんくなるって辛いよな…っ」



「…」


ただの同情やったら、そーやな。って答えて済んだと思う



けど、歩夢のお父さんも、もう亡くなってる



だから俺の気持ちが歩夢には痛いほど理解できるんやと思う



「俺さ、誰かが俺の前から消えていくことが怖い…」



俺の本音がポロリと漏れた



その瞬間歩夢に抱きしめられた



それと同時に、ああ、やっぱり俺は歩夢が好きやなって改めて思った



そして歩夢は



「あたしは拓人の前からおらんくならへん。



あたしは拓人のこと支えるから」



そう言った。