「あたし、歩夢が羨ましかった
坂下君とあんなに自然に話せる歩夢が」
あたしのこと羨ましいなんて…
「ほんまにごめん…っ」
あたし気付かんうちに奈美を傷つけてた…
「けど、歩夢やから憎しみとか生まれへんくて、羨ましい気持ちしかなかってんで…?」
「え…?」
わけがわからんくなって、あたしは混乱する
「あたしが告白した時坂下君、ごめん、俺好きな奴おる。って言われて…
それで坂下君が優しい目向けるのは歩夢だけやなって思って
それって歩夢ちゃんのこと?
って聞いたら、照れ臭そうにうんって答えてて…」
「…」
「その時まで正直歩夢のこと良いイメージなくて、なんであの子なんやろって思ってたけど、その日の放課後にハンカチ渡してくれて、とびきりの笑顔向けてくれた歩夢を見たら、この子やったらあたしが諦めてでも応援できるかなって思った」
「奈美…」
「それで早く忘れるために呼び方も拓人君から坂下君に変えた
まあ実際半年ぐらい引きずってしまってんけど…
だから、歩夢と坂下君には幸せになってほしい」
「ごめん、ごめん奈美…」
気づけばあたしも涙が溢れてて、2人とも泣き出してた
「あたしは聞きたい言葉はごめんじゃないで…?」
「奈美、ありがと…」
「うん!」
あたしと奈美は目を合わせて微笑みあった
自分の好きな人のこと諦めてまで、奈美はあたしのこと応援してくれた
「奈美が親友でよかった…」
「あたしもそう思ってる」
あたしと奈美の絆は今日でまた深まったと思う。
「歩夢のこと、今でも1番に応援してんで!」
「ありがとう奈美。」
「いえいえ」
あたしはこの日、ある決心をした
2月13日。
今日は春馬にチョコレートを渡しに行く日
「拓人〜あたし今日用事あるから、帰りは先帰って!」
あたしは一緒に登校している拓人にそう言った
「買い物?
俺ついて行こっか?」
「ううん、大丈夫!
ちょっと色々あって。
うん、とにかく今日は先帰って!」
春馬にチョコを渡しに行くって言ったらいいのに、なぜか言われへんかった。
「そっか〜。
うん、わかった
気をつけて帰れよ?」
そう言ってあたしの頭をポンポンと撫でて、何事もなかったように歩き出す拓人にあたしの鼓動は早くなる
「ありがとっ…」
「ん」
あたしに優しい笑顔を向けてくれる拓人にドキドキしまくりやった
ーーーー
放課後、みんなが帰ってから学校を出て、春馬の家の前に来た
【今春馬の家の前おるねんけど出て来れる?】
このLINEを送ったらすぐに既読がついて、春馬が出てきた
「歩夢??どうした?」
あたしがいきなり来たからびっくりしてるんかな??
春馬は大きく目を見開いていた
ちゃんと渡さないと…
それに伝えることもある。
「あの、これ…
受け取ってもらっていい?」
あたしは、春馬にチョコを渡した
「えっ…俺に?」
「うん。」
けど、これは
「友チョコとして…」
「んー。そっか。
最後まで俺のこと考えてくれて、チョコくれたんやんな?
ありがと。」
春馬は笑ってるけど、悲しそうに笑ってた。
春馬がこんなに悲しそうに笑うの初めて見た…
「俺さ、歩夢を振ったこと今でもずっと後悔してる」
「…」
「あの時、ちゃんと俺の気持ち伝えたら今でも付き合ったままでおれたんかな〜って」
春馬はそう言って手で顔を覆った
「けど、歩夢があの時俺のこと1番に想ってくれてたんやったら、もう十分すぎるぐらいの幸せを俺はもらった。」
「そんなことない…っ
あたしなんか春馬に想ってもらえるような女じゃない…」
あたしはあの時春馬のこと1番大切にしてるつもりやったのに、1番傷つけてた。
「歩夢は自分を責めんとって。
辛い涙流さんとって。
俺は歩夢の笑った顔が1番好きやから。」
「ごめん、ごめん…っ」
春馬が言ってくれてるのに、今は笑える気せえへん。
ブーーーン
その瞬間あたしのすぐ後ろに車が通って
フワッ
春馬に抱きしめられた。
とゆうか、轢かれそうになったのを助けてもらった。
「あー、ごめん。
抱きしめるつもりじゃなかってんけど…」
春馬、困ってるやんな…
「うん、今離れ…「これが最後にするから。」
あたしの言葉を遮るように春馬が言った。
「歩夢のことを想う、この気持ちにもう鍵かける。
ちょっとの間は引きずると思うけど…」
「うん…」
春馬はいつでもあたしに優しかった。
今も春馬は優しすぎる…
「だから、最後に抱きしめ返してくれる…?
一瞬でもいいから…」
春馬は言葉を詰まらせながらしゃべる。
多分…
春馬泣いてる…
ギュッ
あたしは軽く、春馬を抱きしめ返した
そうしたら春馬はすぐにあたしを解放した