その瞬間、心がほっとして、私の頬に一筋の涙が伝った。
「お前が怖い時とか、嫌な思いしてる時は、俺が一番に来て助けたる。
だから、そろそろほんまに俺にすれば?」
「んっ……」
そう言って拓人はあたしにそっと口づけした。
その瞬間、遠くで
「あけましておめでとう!」
「happynewyear!!」
って声が聞こえてきて、一年がおわったんやって気づいた
そして唇は一瞬で離れた
けど、あたしにとってはめっちゃ長いものに感じた。
拓人の顔が月明かりに照らされて、いつも以上にかっこよく見える。
「勝手にキスしてごめん。
去年は友達としてしかお前に見てもらわれへんかったけど、今年は男としてみてもらえるように頑張る
お前の気持ちはあいつにまだ向いてると思うけど、俺は全力で奪いに行く」
あいつとは、多分春馬のこと。
いや絶対春馬やと思う…
「…」
あたしは何も言うことができひんかった
ただただドキドキが止まらんくて。
「クラスの奴らには、俺から連絡しとくから今日は帰ろ」
「うん…」
あたしは拓人の後ろについて行った
拓人の隣に並んだら、多分心臓のドキドキが止まらんから、拓人の斜め後ろを歩いた。
帰り道はずっと無言で
ゆっくり歩いてくれるのも、斜め後ろにおるあたしに横に来いって言わんのも、車道側を歩いてくれるのも、全部全部拓人の気遣い。
「あけましておめでとう。」
「あ、うん…
あけまして、おめでと。」
家の前に着いた時、拓人があたしの方を向いてそう言った
「じゃーな」
「あ、うん、ばいばい…」
この日はキスのことを思い出して、なかなか眠りにつけなかった。
二人への気持ちの正体を
やっと自分で見つけることができた。
その時のあたしは、多分心の中がすっきりしてたと思う。
あの日…
拓人に2度目のキスをされたあの日から1ヶ月ちょっとがたった
キスされたからってあたしたちの関係に変わりはない
それと、キスされてから気づいたことがある
それは、1度目にキスされた時と、2度目にキスされた時のあたしの気持ちが違ったこと。
1度目のキスは、なんてゆうかショックって気持ちが大きくて、早くそのことを忘れたいって思ってた
けど、2度目のキスをされた時は、1度目よりもドキドキして、全然嫌な気持ちにならんかった
これは、明らかに1度目の時よりも拓人のこと好きになってるってこと…?
まだ恋愛感情かは微妙やけど…
それともう1つ、春馬のことを考える時間が減った
前までは、1日中ほとんど春馬のこと考えてた日もあったのに、拓人とおったら、自然と春馬のことを考えへんくなった。
この気持ちの変化の正体はなに…?
ーーーーー今日は2月12日。
つまりバレンタインの2日前
「んーどうしよ
幸希に何味のチョコがいい?って聞いたら、奈美ちゃんが選んだやつやったらなんでもいいって答えられたし。
もうどうしよ!」
そして今は奈美とチョコを買いに来てる
「奈美が選んだやつやったらなんでも喜んでくれると思うで?」
「ほんま良いこと言ってくれるな〜!」
奈美は買いチョコと、手作りチョコも渡すって言ってたから、幸希君は絶対喜ぶと思う
あたしは、今年拓人と春馬に渡す
春馬の家は、高校とあたしの家の間ぐらいにあるから、明日学校帰りに届ける
拓人には明後日学校で渡す
渡すことは2人に内緒にしてる
春馬にはブラックチョコを
拓人にはミルクチョコを
それぞれ好きそうなチョコの味を買った
奈美は、幸希君にホワイトチョコとストロベリー味のチョコを買っていた
チョコを買い終わったけどまだ時間があるからあたしたちは近くのカフェに入った
「歩夢〜!!
もう1年生終わるで…」
明らかにしょぼんとした奈美
今は幸希君とクラス違うからクラス替え嬉しいはずやのに
「奈美は幸希君となれる確率あるのに嬉しくないん?」
「それは嬉しいけど、それと同じぐらい嫌なことあるやん。
歩夢とクラス離れるかもしらんやろ…?」
「もうそんなこといきなり言わんといて!
嬉しくて涙でそうなるわ!」
あたしとクラス離れるかもしらんことを考えて落ち込んでくれる奈美が素直に嬉しかった。
「それと同時に!」
奈美は思い出したようにパンっと両手を顔の前で叩いた
「ん?」
「歩夢、坂下君とも別れるかもしらんで!」
「あーうん。」
「ちょっと!反応薄い!
クラスが離れて、坂下君が違う女の子と仲良くしてたらどうするん!?」
拓人が他の女の子と仲良くする?
「それはちょっと嫌かも…」
「きゃーー!乙女!」
あたしがそう言った瞬間叫びだした奈美
お客さんに注目されちゃったし…
「お客さんに見られてる!奈美!」
「わ!すみません…」
今頃気づいた奈美は周りの人たちに謝って、再びあたしと向き合った
「歩夢、そろそろ気付かんの?」
奈美がいきなり真剣な目になった
「え…なにが?」
「坂下君への気持ち」
「拓人への気持ち…」
…奈美はもうわかってるんかな…?
「あたし、拓人が好き…」
今まで気付かんふりしてた
はじめは恋愛感情とか全然なかったけど、次第に拓人にドキドキする回数も増えて…
好きになってた。
「あーもうよかったー…」
奈美はそう言ったと同時に一筋の涙を流した
「え、ちょ、奈美!?」
あたしは慌ててポケットからハンカチを取り出して奈美に渡す
「歩夢はなんでそんなに優しいんかなー…」
「あたしは全然!
奈美の方が全然優しいし、いつも助けられてんで?」
いつも相談に乗ってくれるし、アドバイスもくれて、最高の親友
「あたしと歩夢がはじめてしゃべった時のこと覚えてる…?」
「野外学習で同じ班なった時??」
確か、くじ引きであたしと奈美が同じ班になって、よろしくねってお互い挨拶したのがはじめてのはず…
「やっぱりそう思ってたか〜
実はその前にも一回話してる」
「え!?」
あたしは持っていたグラスを落としそうになった