なんとか講義もバイトもこなし、
予定通り七時には上がることが出来た。

挨拶もそこそこに、
働いているレンタルビデオショップを出ようとした所で
ふと返却カウンターを見ると、
ちょうど新作映画が返却されてきていた。

(これ秋紀が観たいって言ってたな、)
泣けると話題の映画で、CMでも良く観ていた。
話題の新作ということで、本数は結構あるものの
中々借りる事が出来ないはずだ。
実際、返却されてきたこのタイミングも
奇跡的だ、とは大袈裟か。
よし、借りていってやろう!
思い立ったら即行動と、
バタバタとレンタルをして、急いで店を出た。

多分、秋紀はもう来ていると思う。
アイツはいつも五分前行動で、しっかりした奴だから。

その割に、俺が遅刻をしても嫌な顔一つしない。
というか、秋紀が怒った所を
あまり見たことがないと思う。
まだ小さい頃なんかはよくケンカもしていた。
でも、ある程度大きくなってからは
ほとんどケンカをした記憶がない。
どちらかといえば、俺は短気な方で
秋紀はおっとりというか気が長いというか、
とにかく誰にでも優しいのだ。

代返を頼まれたら引き受けるし、
バイトの残業もシフトも出来る限り断らない。
凄いなぁ、と思う反面少し心配にもなる。
でも、それが秋紀の長所でもあるし
俺はそれをとやかく言うつもりは無かった。

ただ、それに漬け込んで秋紀を
利用しようとしてくる輩には、
俺が直々に制裁を下してやるつもりでいる。
幸いにも今のとこ行動に移すようなことは無かったが。

(これもあいつの人徳ってやつかな)

そんなことを考えながら
早足に待ち合わせ場所に向かった。