「これ着て入れば」


頭に引っ掛けられた、白地に黒のロゴ入りTシャツ。


「でも濡れるよ?」


「帰りの服あるから。着ろよ」


そういってテントから出て行くと、ヤヨはまた空気入れに参加しちゃった。



それなら、借りちゃお。



ヤヨの服、おっきい。柔軟剤の匂い。
袖は折って、裾はシュシュで止めて。
いいかんじ。


テントから出た頃。
みんなも浮き輪にゴムボートに準備万端。


走って海に行っちゃうあたり、子供っぽい。


「あれ?それ弥生に借りたの?」


「うん」


「せっかく水着かわいいのに」


って言う藍ちゃん。
聞きたいんだけど。


「ねーね。藍ちゃんって幼馴染くんと」「土屋さんたちー!はやく来いよー!」



男子の声。藍ちゃんに手を引かれてみんなのところまで走った。



大人の階段のぼったのか、聞けずじまい。
でも、やっぱり聞かないにしとこ。