辿り着いた部屋にテーブルと椅子を置いて、二人して息をつきながら、ベルは寝台、リュカは椅子に座り込んだ。
「漆喰塗りとキャンバスの布張りは?」
「う……、それはちょっと、やってみる機会もなかったから」
そう言いながら目を逸らしたベルを見て、リュカが小さく吹きだした。
「ま、ゆっくり覚えていけばいいよ」
リュカはそう言うと立ち上がり、「それじゃ、俺はそろそろ掃除の続きをしようかな」と言って、ドアの方へ歩いていく。
「手伝おうか」
「いや、いいよ。自分の部屋の掃除は自分で。ルルー工房の決まり」
ベルは立ち上がりかけて浮かせた腰を、リュカの返事を聞くと、ストンと寝台に戻す。
「説明するものはあらかた終わったし、後は自由に過ごして。
工房の中をうろうろしてもいいし、絵の具の調合の仕方を親方がまとめたメモなんかもあるから、それを見ててもいいし。
何かわからないことがあったら、俺に聞いてくれたらいいから」