何十回か掛けるうちゲームの要領を掴んではいったが、その大きく波打ち独り歩きするような心臓の躍動には、けして慣れることがなかった。


辻は、プレイヤーかバンカーの片方が多く続いているテーブルを探すことにする。


確率上、同じ側が六回も続いたら目が変わる可能性が高いと睨(にら)んだからだった。

すぐに、バンカーが五回連続できているテーブルを見つけると、プレイヤーに勝つまで100(330円)、200、400と勝つまで倍々で6400バーツ(2万1000円)まで連続7回掛けることにした。


七回中一回プレイヤーにくれば、プラス100バーツになる計算だ。


連続7回負ける確率は、二の七乗で、つまり、128回に一回。


すなわち、0.78%の確率でしか負けないわけで、それは、とても低い確率に思え、また、仮に2万バーツくらいなら、負けても構わないと内心思っていた。


辻がテーブルの前で座っている客の肩の間を割って後ろから立ったまま掛けると、彼らがちょっと迷惑そうに頬を歪(ゆが)める。


あっという間に2回連敗し、次の掛け金は、400バーツ(1300円)になっていた。


淵が綺麗な明るいピンクと白の縞模様した5000バーツ(1万6000円)チップをテーブルに置き、小額のチップに換えてもらう。


先ほどチップを換える人と同様に振舞ったが、どこか無駄な動きというかぎこちなさが残る。


テーブルのプレイヤー側には辻の400バーツと、他人が掛けた水色と白の縞模様の1000バーツチップが同じ長方形のマスに取り残され、それを見守る辻のバクバク打つ心臓が冷や汗をかく。


プレイヤー 8、バンカー 3で、結果はプレイヤーのナチュラルウィン。


二枚の合計が8か9の場合は、お互い三枚目を引くことができないようだ。