デザートコーナーには、数種類のケーキと甘味カキ氷、中身が何だか分からない笹に包まれたものまである。


辻とセイジは、野菜と肉・魚料理をバランスよく皿に盛り、やすは豪快に肉料理中心だ。


食事をしながらやすは、バカラのルールについて説明した。


それによると、テーブルの上に『プレイヤー』と『バンカー』という二つの掛ける場所があり、初めそれぞれに二枚ずつカードが配られる。その合計が9に近いほうが勝ちで、場合によっては、三枚目を引くこともあり、それは、カードの合計によって分かれる。


カードの合計が10以上の場合は下一桁の数で勝負し、10以上のカードは、全て0として計算する。1の掛け金に対し1の配当だが、バンカー側が勝った時だけ5%の手数料を払う。


また、掛け金の低いテーブルではその手数料が無い代わり、”バンカー、6勝ち”の時だけ半分の配当になるという。


セイジはなんとなく理解したようだったが、頭の回転の鈍い辻には難しく、特に三枚目を引くのか引かないのかのルールがよく分からない。


それでも掛ける場所は、『プレイヤー』か『バンカー』の二箇所なので、当たる確率は、ほぼ50%だと思った。


辻がナイフをテーブルに置くと、「しかし、辻ちゃんきれいに食べるねぇ」とやすが感心した声を腹の底から出すと、「ホントすっねえ。オレも見習わないと」とセイジが辻の油っカスしか残っていない皿に目を落として言った。


「ああ、何でですかねえ。小さい頃、おばあちゃんち行くとよく言われたんですよ。『コメ一粒でも、お百姓さんが汗水垂らして一年かけて作るんだら、残したらだめなんだよ。稲穂こうべ垂れて実るかなあ』って」


「それを言うなら『実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな』じゃな?」とセイジが言った。


「そうとも言うかも。さすが東大生。おばあちゃんも、米作りしてましたから。まあ、習慣ですよ」