その日の放課後、私は自分から彼の教室に向かった。
亜紀には、教室で待ってもらうように伝えた。
彼は、自分の机に座って前に一緒にいた女の子と話していた。
今思えば、こんなに分かりやすくこの子といたのになんで気が付かなかったのかな。
「陽太(ヨウタ)」
そう、彼の名前を呼ぶと彼は私を見るなり慌てた様子で立ち上がった。
「李緒!?びっくりした、どうした?今日も帰れないって伝えたよな?」
「うん、でも少しだけ話したいからさ。離れたとこで5分だけ時間ちょうだい?」
そう伝えると、陽太は一瞬考え込んで分かった、と言って小さく頷いた。
隣にいた女の子にごめん、と断りを入れて。
やっぱり、今日もこの子と帰るつもりだったんだなって、ハッキリと分かった。
✳︎
人があまり通らない屋上手前の階段の下まで行くと、彼は居た堪れない様子でソワソワしていた。
「それで、なんの話?」
あくまで淡々としているけど、なんだかもう内容が分かっているような表情だった。
「私、陽太のことすごく好きだった、」