「俺、好きな人がいるから…ごめんね」



そのとき、聞こえてきた亜紀の言葉。


はっきりと鮮明に。



"好きな人がいるから"
その言葉は、私の頭にズン、と重くのしかかった。



「そっか、ありがとう…」



女の子の、残念がった声が響く。



好きな人がいたんだ……亜紀に。
いつから、好きな人がいたんだろう。



教えてくれたら…もっと早く聞いていれば、亜紀から離れたのに。


そしたら、亜紀のこと好きにならなかったかもしれない。



そんなの、言い訳だけど。





パタパタ…っと音がして、女の子があの場を離れて走って去っていく姿を目で追った。


俯いてて、泣きそうな顔をしていた。



少し前の自分を思い出して、胸が痛くなる。
それでも今は、告白が成功しなくてホッと安心してしまう最低な自分もいた。



「島崎?なにしてるの?」


「亜紀………」



いつの間にか、目の前に亜紀がいて。



不思議そうに私のことを見つめる亜紀から、思わずフイッとそらしてしまう。



亜紀の顔を見ると、苦しい。