「亜紀、どうしたの?」



我に帰ったときにはもう島崎は椅子に座っていて、俺の前にいた。


しばらく放心状態だったのだと気付く。




いやでも、信じたくない光景だ。
あんなの……さすがにきつすぎる。



簡単にさっきの出来事を思い出せてしまうことが辛かった。



そりゃ付き合ってたらキスの1つや2つするよね……俺は彼氏でもなんでもない。


あいつには、まだキスをする権利はある。




「ねえ、大丈夫?」


「ほっといて、気にしなくてもへいき」




つい、島崎に当たってしまう。



本当は、なんでキスしたの?とか、抵抗しなかったの?とか聞きたいことはたくさんある。


でも、見てたなんて言えない。



「そっか…亜紀に聞いて欲しいことがあったんだけど」


「………どうしたの、」




少し困ったように眉を下げる島崎の表情が気にならないはずもなく島崎の言葉に返事をする。




「さっきね、私拒んじゃったの」



「………え?」



なんの、話…?さっきのことで合ってる?



心臓が途端に焦ったようにバクバクとさせながら、島崎の言葉の続きを聞く。