よくよく見れば、少し息が上がってるし額に汗がじんわり浮かんでいるのが分かる。


亜紀にはすべてお見通しだったのか。



「ちょうだいって、亜紀もコーヒー飲めないじゃ…」



私がそう言い切る前にひょいっと缶コーヒーを奪った亜紀はプルタブを開けて口を付けた。



そして、ものすごい勢いでコーヒーを飲み干していく。



ゴクリ、と飲み込むたびに動く喉元に思わず釘付けになってしまった。



「ぷはっ、冷たいけどやっぱりにが〜」


「飲めないのに飲むからじゃん、なんで無理して飲もうとしたの」



「だってもったいないでしょ。あいつが飲まないなら俺がなんでももらってあげるよ」



「…ばかじゃないのっ、」



なんて言いながら、亜紀が来てくれたことが嬉しくてたまらなかった。


なにも言わなくたって、亜紀は分かってくれるから。



ぎゅっ、と胸が締め付けられるように苦しくなって涙がじわりと浮かんだ。


でも、すぐに涙を指先で拭って亜紀に笑顔を見せた。



「えへへ、ありがとうね亜紀。お詫びにリンゴジュース買ってあげる」


「やった〜俺の好きなものちゃんと知ってるんだね」



「まあ中学生の時から変わらないからね」



亜紀は無邪気な笑顔を見せながら、嬉しそうに自販機の前に立った。


亜紀のあとを追いながら、こうして亜紀といつもと同じような会話をすることで、彼の言葉を忘れることができた。