次の日。


最寄り駅で出会った亜紀と学校に向かう途中で、反対側から歩いてくる彼を見つけた。



彼を見つけたことに嬉しい気持ちになる私はまだ彼のことが好きなんだと実感する。


そして、彼の方も私をまだ好きなのだと思い込みたい。



「おはよう!」


亜紀に一言断りを入れて彼の方へ駆け寄る。
そしておはよう、と告げれば彼は応えてくれた。



「李緒(リオ)、おはよう」



私、島崎 李緒の下の名前で呼んでくれる男の子は彼だけだ。特別感があって、とても好き。


名前を呼ばれるだけで、くすぐったいような、でも嬉しい気持ちが溢れる。


今日は、彼と話ができそうな気がする。



「今日は一緒に帰れそう?」


そう私が声を掛けると彼は一瞬動揺したように顔を逸らした。


そんな、表情にすこしチクリと胸が痛んだ。


そして、彼がなにか言おうと口を開いたそのとき…




「今日はだめ〜!島崎は今日俺と遊びに行くの!」


「えっ!?」



突然、亜紀が私と彼の間に入ってきて肩を組んできた。



彼の前で堂々とくっついてきたのは初めてだ。




「…小町?」


彼も亜紀を見て戸惑った表情を見せる。




「好都合でしょ?今日は俺の島崎ね?」




彼に自慢げな表情を見せつけると、「そういうことだから、」と言って踵を返す亜紀。



驚いてなにも言えない2人を良いことに亜紀はそう言うと私の手を握って学校に向かって行った。



"俺の島崎ね?"って、どういうこと?



ドキドキして、なんだか顔も熱い気がする。
きっと、気温のせいなんかじゃない。



亜紀、の、せいだ……っ。



亜紀の突然の発言に私は、しばらく動揺を隠すことができなかった。




……そして、彼からはその後今日は帰れないから、友達と過ごして。とメッセージが来ていた。