「でもあたしは、友香には俊也くんの方が合ってると思うけどなぁー」
「はぁ?!」
思わず顔をあげた。
絵里は何だか楽しそうに、両方の親指と人差し指でカメラのフレームを作って、片目を閉じた。
その枠に入っているのは、私と、後ろの方にいる俊也。
「何ていうか、こう…。何だかんだ、二人の組み合わせが一番しっくりくるっていうかさぁ」
「こなくていいって!」
「ケンカばっかしてるけど、それも愛情の裏返しっていうか?」
「ないないない」
「じゃあもし、俊也くんに花火誘われたら?行くでしょ?」
「行かない!ずぅえーったい、行かない!」
「ふーん?」
腑に落ちない顔をしながらも、面白がってる顔で絵理は笑い、前を向いた。
ありえないよ。
俊也なんて…。
私はちらっと後ろの方の俊也を見た。
俊也はエナメルバッグに顔をうずめて枕にして、目を閉じていた。
一限目は、俊也の一番嫌いな化学だ。
寝るの早いよ…。
私はもう一度窓の外を見た。
先輩が屈伸してる。
ストレッチしてる。
それを見るだけでドキドキした。
花火大会かぁ…。
私はやるせなさげに小さくため息をついて、机から教科書とノートを取り出した。