絵理が窓からグラウンドを指差した。


体育の授業だろう。

準備体操をしている三年生たち。


青いジャージ。


その中でひときわ目立っている(私にはそう見える!)先輩が、北川隆弘先輩。



高校一年の秋、女子バスケの友達の試合の応援に行った時、応援席では男子バスケ部の人たちも一緒だった。

そこで偶然、隣に座ったのが北川先輩だった。



背が高くて、体が引き締まってて、優しいたれ目で、ちょっとぼーっとしてるような雰囲気。

そんな先輩に、私は一目惚れしてしまった。


バスケ部の友達の協力で、今は知り合い程度の仲。

っていっても話す事と言えば、


こんにちは、とか。

おはよう、とか。

暑いねぇ、とか。



それも一週間に一回会えればいい方ってくらい。


告白なんてとんでもない。

見てるだけで幸せな、憧れの人なんだ。



「ねぇ友香さ、先輩のこと花火に誘いなよ!」


絵里が威勢のいい声を出した。

私は即、首を横に振る。


「無理無理無理…!そりゃあ、誘いたいけど、さぁ……。でも、やっぱり無理!」

「何でよ、言わなきゃ絶対後悔するよ?」

「うーん…。でも、先輩とは付き合いたいとかそういうんじゃないっていうか……憧れっていうか…」

「でも花火一緒に行きたいっしょ?」

「うー…ん。うん。はぁ~」



私は大袈裟にため息をついて、机に伏せた。