「うっうん!」

私は少し恥ずかしくなりながらも、一緒になって慌てて下駄を履いた。


「はい、うちわ」


俊也は私の左手に金魚の柄のうちわを渡し、右の手を取った。

私は手をひっぱられて、パタパタと俊也の後についていく。


下駄の音がカンカン響く。

二人とも浴衣だから、小さな歩幅で走った。

下手したら転びそうだ。


舞台はすぐ近所の土手。

道には人がうじゃうじゃ溢れている。


浴衣のカップルや家族連れ。

暗闇で光るおもちゃのライトを売っているおじさん。

出店も沢山並んでいる。



暗い所ならいいけど、明るい所に出ると、結構目立つ、私達。

どっかから、“バカップルー”とか聞こえてくる。


「ねぇ、何か見られてない…っ?」

「いいじゃん、いいじゃん!」


土手にやっとたどり着き、階段を上った時だった。

ひゅ~っと音がして、夜空に大きな花火が上がった。



「うわぁっ、綺麗…!」


何発も何発も上がる花火。

金色、緑色、桃色。


ドンっという音が心臓に響いてくる。

周りの人たちも目をキラキラさせて夜空を見上げていた。