「何だよ、俺何もしてなくね?!…つか、お前ら何してんの?」
「友香がね、先輩を花火大会に誘う練習してんのっ」
「ちょっと、絵理!」
絵理、やっぱり面白がってる!
すると俊也が私のまん前に立って、腰パンの制服のポケットに手を入れた。
「じゃあ、俺が実験台になってやるよ。俺を先輩だと思って言ってみ」
「あーいいかもね。実際に人間がいた方が。ほら、友香」
絵理が私の背中に手を当てた。
私は仕方なく俊也と向き合った。
「私と一緒に……花火大会に………」
俊也の真剣な目に私の姿が映る。
ん?どうした?私。
先輩に見立てているはずなのに、私にとっては目の前の俊也は、俊也意外の何者でもなかった。
こうして改めて見ると、随分背が伸びた。
目もきりっとして、眉も格好つけて整えて、髪もいじって、大人っぽく、男っぽくなった。
もうあの頃の泣きむし俊也じゃないんだ……
「花火大会に………」
“友香には、俊也くんの方が合ってると思うなぁー”
私は熱くぶつかった視線に耐え切れなくなって、
「や、やっぱ無理っ!」
「ちょ、友香?!」
思わず教室を飛び出してしまった。
私、何考えてたの?!
とりあえず落ち着かないとと思って、トイレに駆け込んだ。
でも私はすぐにハッとして、慌てて個室に入って鍵を閉めた。
洗面台の所で髪をいじっていた人……
昨日、北川先輩と仲良く話していたバスケ部のマネージャーの、
南先輩――。