「はァ〜すごいねー。どこもかしこも、大盛り上がりだね!」


夏休み直前、教室では、

あと二日に控えた地元の花火大会の話で持ちきりだ。


“誰か誘った?!”

“浴衣着る〜?”

“彼氏とー”



花火大会に誘うという事は、告白とほぼイコール。

皆ある意味、必死っていうか……誰もかれも落ち着きがない。


目の前で

“浴衣に似会う髪形アレンジBEST15”

を読みながら、絵理が目を輝かせた。




「でも、本当楽しみだね!あたしは潤くんと…きゃーっ」

「はいはい、よかったねぇー」



私、川嶋友香。

高校二年生。

今まで彼氏と花火大会に行った事が、ない。




中学生くらいまでは女友達同士で行ってたけど、

いつしか“花火大会=カップルで行くもの”っていう

暗黙のきまりが出来ちゃって。



「あれ、友香。スカーフは?」

「え?ああ…ちょっと忘れてきちゃって……」


私はきまりが悪そうに、セーラー服の寂しい襟元を触った。


「ねぇねぇ、友香は花火、誰と……」



その時、「はよーっ」と勢いよく教室に入ってきた奴が私を見て「あっ」と声をあげた。