彼女は夜道の途中で立ち止まり。

「ところで」

クルリと振り向いた。

「何か用かしら?サインならお断りしてるし、対戦は気分じゃないんだけど」

…闇の中、一人の大男が立っていた。

暗がりではっきりとは見えないが、それでもシルエットだけが浮かび上がる。

爛々と輝く両眼。

身を包む闘気で頭髪が逆立つ。

その姿が、莉々には鬼に見えた。

「意外よな…あの小僧がお前のような小娘を傍らに置いているとは」

口角をつり上げて、その鬼は笑った。

「あの小僧?龍宇さんの事?」

訝しげな表情で問い掛ける莉々に対し。

「答えよ小娘」

鬼は問いで返した。

「お前は龍宇の何だ?」