『ありがとう。

でも俺、好きな人いるんだ。』


そんな桐ちゃんの声が聞こえたと同時に
あたしの横を走って通り過ぎて行った影。

今のはきっと、桐ちゃんに告白した女の子だ。



「桐島センセ……」


あたしはいつもより少しトーンを下げた声を出す。

そしてクサイ演技をしながら桐ちゃんの前に立った。



『なんだ…お前か、夏希』

なぜかあたしの顔を見た桐ちゃんは溜め息を漏らす。


今のはなんの溜め息…??


「モテ先も大変だね」

モテ先とはモテる先生のこと。



『そんなんじゃねぇよ、俺は』

そう漏らす桐ちゃんの横にあたしは座った。


「桐ちゃん、ごめん。
勝手に聞いちゃった」

アハハと、笑って誤魔化す。



『知ってるよ、そんなの。

あの本棚の影から巨体が見えた』


その桐ちゃんの言葉を聞いたあたしは桐ちゃんを殴る。


相当痛かったらしく、顔を歪める桐ちゃん。



ちょっと、やりすぎちゃったかな?