『それともこっちのほうがいいですか?』
さっきとは違う顔で大ちゃんが喋る。
これが、いつもの大ちゃんだ。
『大、おもしろいな。
二重人格って怖ぇー!!』
中ちゃんはそう言いながら大爆笑。
「大ちゃん、ちょっと話がある」
陽菜が大ちゃんの腕を引っ張って、どこかへ行く。
『海道。お前、もういいのか?』
グラウンドの片隅のベンチに中ちゃんと並んで座る。
「桐ちゃんのこと?」
中ちゃんは何も言わなかった。
「いいんだよ。
桐ちゃんは手紙をくれた。
そこには今どこにいるか、
ってことが書いてなかった。
それはさ、あたしに来てほしくないってことじゃん?
なのに、いつまでも追い続けちゃいけないんだ。
桐ちゃんのためにも、あたしのためにも。」
完全に吹っ切れるのにはまだまだ時間はかかると思う。
けど、少しずつ…少しずつでいいから、
桐ちゃんのことを思い出にしたいんだ。