『どうしてそんなこと言うんだよ?

なんで、忘れなくちゃいけない?』


陸に代わって兄貴が聞いてくる。



「別にいいじゃん。

あたしが忘れるって言ったら、忘れるんだよ。


どんなに頑張ったって、桐ちゃんは帰ってこない。

あたしがどれだけ想ってたって、桐ちゃんはあたしを想ってない。


だから忘れる。

桐ちゃんじゃない人と、幸せになる。


そう、決めたから。」


それだけ言ってあたしは自分の部屋へ行った。


久しぶりの自室はほぼ空っぽ。

ほとんどの荷物はアパートにある。



「夏希?入っていい??」

ドアの向こうから陽菜の声。


陽菜はあたしの返事の前に、勝手に部屋に入ってきた。