「んじゃ、あたしはもう肩できてるから思いきり投げるよ?」

夏希はそう言ってボールを握る。


ドクンドクンと大きな音をたてる心臓。

頬が自然に緩むのが分かる。



【パンッ】


俺の構えたところに吸い込まれるように入るボール


鳥肌が立った


右で投げていたときより、
明らかにすごくなっていた。



『まだまだだな』


ニヤッと笑って球を返す。

実際はまだまだなんかじゃなかった。


多分、今の俺じゃ力負けしてる。



「ねぇ…桐ちゃん

ビックリした??」




『あ……うん、まあな』


なんてあやふやな答えを返すが本音を言えば目が飛び出るかと思うくらい驚いた。


背が伸びて色気が少しだけ出た夏希

最初は目を疑った。


こんなところに夏希がいるはずがない、

そう思った。


簡単に信じられるワケがない。


でも、笑顔はあの頃と何も変わっていなくて。


バットの振り方だって、昔のままで。



夏希なんだ…そう思えた。