『俺、もういい。

夏希とデートもできたし、手だって繋げた。


それだけで十分。

もう、しがみつくような格好悪いことするのはやめた。


今から話すことは俺の口から言っていいことか分からない。


でも夏希、お前は絶対聞いておいた方がいい。』


そう断言した大ちゃんは砂浜に座った。

もうすぐ夜がやってくる。



『桐島先生…あの先生はホントにすごいと思う。

俺には真似できない。


桐島先生はずっと夏希が好きだった。

口になんて出さなかったけどいつも目はお前だけを見つめてた。


それは夏希も同じで。


なのに2人はいつもケンカばっかり。
でも桐島先生はそれがよかったんだろうな、きっと。

俺、桐島先生がうらやましかった。
いつもいつも夏希とバカできる桐島先生が。

うらやましいって言う気持ちの反面、悔しかった。
2人のあまりの仲の良さに何度も妬けた。


自主練してる夏希のところにわざわざ行ったりして
桐島先生に見せつけてる自分がいて。

自己嫌悪だ。

いっそのこと、奪ってやろうかと思った。
無理矢理、お前を振り向かせてやろうかと思った。

何度も…何度も…



だけど、そんなことしたって意味がないことも分かってた。

夏希はそんなことに屈しない、って。

夏希は何があっても桐島先生が好きなんだ、って。


分かってたから俺は何もできなかった。』


グスッと鼻を鳴らす大ちゃん。

きっと泣いてる。


隠そうとしてるけど、あたしには分かる。