彼女は深々とお辞儀をした。
俺が彼女を責めなかった理由は2つある。
1つは副HR長になってもあまり大変そうじゃないって思ったから。
もう1つは彼女と関わる機会を彼女が作ってくれた、という喜び。
「今日は本当にありがとうございました。」
そう言って彼女は帰っていった。
本当は礼を言わなければならないのはこっちだが、話を複雑にしたくなかった。
「ありがとう。」
彼女が去った後に俺はそう呟いた。
言った後に誰かに聞かれていなかったかが気になった。