瑛斗が目を覚ますと、昨夜あのまま寝てしまったのかソファーに向日葵と二人で寝ていた。

「向日葵…。」

瑛斗は向日葵の体を揺すった。

小さな声をあげ向日葵は目を覚ました。

「おはよ。」

瑛斗の体の上に半分乗る様にして寝ていた向日葵は、驚いた。

「ごめんなさい。」

「いいよ。このままで。」

退こうとした向日葵の体を引き寄せた。

「もう少しこうしてたい。」

「重くない?」

「お前の重さ知ってるから、なんとも思わないよ。」

そうだ…初めて会った時も、この人は私を抱きかかえたんだと向日葵は思い出し笑った。

「なに?どうした?」

「ううん。そういえば出会った時に抱きかかえたんだなって思って…。」

「そうだな…もう2年近く前になるんだな…。」

「うん、そうだね…。」

「なぁ向日葵…?」

「なに?」

「結婚しないか?」

「えっ??」

勢いよく起き上がった向日葵はバランスを崩しソファーから落ちた。

「なにやってんだよ?!ほら!」

瑛斗は差し出された向日葵の手を掴むと引き起こした。

「昨日、お前の気持ち良さそうに寝てる顔見て、思ったんだ。俺は、そばに向日葵がいてくれればいいって…だから、そばにいて、ずっと笑っていてほしんだ。」

「瑛斗…。でも、その、私…。」

「返事はいつでもいい…。多分、向日葵より好きな女はこの先出会わないよ。だから、向日葵が俺と同じ想いになったら返事聞かせてくれればいい。もし、同じじゃなくてもいいから、ちゃんと返事は聞かせて。」

「…はい。」

普段と変わらない声で優しく言う瑛斗が愛おしくてたまらくなった。

「さてと、朝ご飯にしますか!?」

瑛斗は大きな向日葵の絵の前で、大きな伸びをした。

ドンッ!!!

「なっ…!どうした?!」

瑛斗の背後から向日葵は勢いよくしがみついた。

「瑛斗…私を、私を大人にしてください!!」

瑛斗の胸に顔を埋めたまま、向日葵は大声で叫んだ。

向日葵の言葉に瑛斗は、とっさに体を引き離した。

「な…何言ってんだよ。言ったろ?俺はちゃんと待つって…。」

「…もう、待たなくて…いい。」

「無理しなくていいよ。」

「無理なんかしてない!」

「してんだろ!」

「してないってば!」

「昨日嫌がったじゃんか!?」

「それはっ…」

「ほら、みろ!」

「とにかく、今は瑛斗に…。」

溢れ出た想いは、言葉を詰まらせ、かわりに涙が溢れた。

「向日葵…。」

瑛斗はそっと向日葵に近付き、涙を拭った。

そして、そのまま引き寄せキスをした。

「本当にいいの?」

向日葵は黙って頷いた。

「俺とって事は、その…。」

「私を…桐生 瑛斗のお嫁さんにしてください。」

「…向日葵……。ありがとう。」

「やだ…瑛斗…泣かないで。」

「俺…家族出来るんだ…。」

向日葵は堪らず瑛斗を抱きしめた。

「世界で一番のあったかい家族に、なろうね。」

「あぁ。向日葵…愛してる。」

「私も愛してる。」

瑛斗と向日葵は強く抱きしめ合った。

瑛斗はあの時の様に、そっと向日葵を抱きかかえると、寝室に向かった。

今度は別々の部屋ではなく、一緒の部屋で。

瑛斗は静かに扉を閉めた。