部屋に僅かに差し込む月の光がその男を妖しく照らす。 男は口元だけ作られたもののように微笑んでおり、目は恐ろしい程笑ってはいない。 鉄格子の窓から見える、青白く光る月を眺めていた男はまるで月に微笑みかけているかのようだ。 「エルシス……もうすぐだね……。」 そう言って男は生気が感じられない程白く長い指を月に向かって伸ばした…。