しばらくフラフラ街を歩いて、


「そろそろ帰りますか!」


駅の方へと向かった。


「そろそろ、大丈夫やで?」


彼女に目を向けると!繋がれた手をブンブン振る。

強がってるのがすぐに分かった。

だって、まだ手震えてる。


「今日はこうさせて?デートなんやし」


ちゃんと安心するまで、その手は離したくない。


「藤崎くん…」


「ん?」


「どうして、私なの?」


急に投げかけられた質問。


「好きになってしもたから」


それ以上の理由なんて、なかった。


「私きっと、藤崎くんが思ってるような人ちゃうよ?」


不安そうに聞く姿が、とっても可愛くて、


「確かに、そうかも」


立ち止まって、傘の中で森さんと向かい合った。

繋いだ手を引いて、さっきよりも近付いた身体。


「思ってたより小さいし。思ってたより感情豊かやし。思ってたより大人やないし。思ってたより弱いし…」


言葉を並べていけばいくほど、好きが溢れていくようで…

たまらなくなって、おでこにそっとキスをした。


「思ってるような人やなくて、余計好きになりました」


顔を真っ赤にして俯いた彼女。


「よくそんなこと言えるね…?」


照れ隠しなのか冷たい言葉。


「先輩には、言いたくなりました!」


普通だったら恥ずかしくて言えないようなことも、先輩相手だと勝手に言葉が出てきてしまうんだ。

それくらい、本気やから。

黙りこくってしまった彼女。

繋いでいた手をそのままに、また歩き出した。

俺の横で小さくなって歩いていると思ったら、


「藤崎くん…」


急に俺を見上げてきて、


「…ありがとう?//」


「いや、まぁ…」


そんな可愛すぎるん反則やって…

気付けば雨は止んでいて…

自然な流れでまた、彼女の家まで送った。

その間もずっと手を繋いでいた。

彼女も、もう拒むことはしなくなった。

自然と緩む頬。

幸せな気持ちが全身に走る。

今こそ君に真っ直ぐ伝えてみようか?

そんな事考えてたら家に着いた。

1日があっという間だった。


「じゃあ、また…」


「あ、森さん…」


すぐに家に入ろうとする彼女を、引き止めた。


「はい…」


「俺、やっぱり先輩が好きです。ほんまに、諦めたくないです…」


今日一番の想いを込めて…


「付き合って下さい!」


まっすぐに目を見てそう伝えた。

それから、静寂の中を風が吹き抜けて、


「先輩…?」


寒さからか、それとも…


「か、勝手に…すれば…?」


君の頬は夜空の下でも分かるほど、赤く染まっていた。


「え、森さん?えっ、とー…」


オッケー、ってことでいいの!?


「彼女になってくれますか!?」


「だから…勝手にすればって…///」


君の照れた仕草が、何よりの証拠だった。


「…真由美さん」


「…っ!」


初めて読んだ下の名前。

そのせいかびくっと驚いた彼女。

そんな彼女の体を、俺の全てをかけてだきとめた。


「ちょ、何っ!?」


「ふふ、勝手にします」


「…//」


こんな幸せを、待っていた。


「俺のこと好き?」


「…調子乗らないで」


「調子乗らんから!」


「…知らない」


背中に回った腕が、君の答え。