「勝手にすれば…?」


困ったように俯く彼女に、少しだけ勝った気分だ。

その日は一日、一つの傘に二人並んで色んなところに行った。

いつもより近い距離。

たまに触れ合う肩が、新鮮なドキドキを与えてくれた。

やっぱり、先輩やないとあかんなぁー。

夕飯を食べてそろそろ、暗くなったし帰る時間。


「トイレ行ってもいいですか?」


「ここで待ってるね」


お店の外で少しだけ、先輩に待ってもらった。

すぐに外へ向かうと、先輩が知らん男に絡まれていた。

二人組の男に、無理矢理肩を組まれてて…

荒手のナンパだって、すぐに分かった。

すごく怯えた顔をしていたから。


「お待たせしました!」


「藤崎くんっ…」


俺を睨みつける二人を無視して先輩の手をとった。


「行こ?」


その手を引いてまた傘に二人収まる彼女の手を、握ったまま歩き出した。