改札を抜けて、家までの道のりを歩いていた。


「藤崎くんっ!!」


俺を呼ぶ声が聞こえた。

…嘘、そんなはず…

振り返ると、


「森さん…」


やっぱりそこには、彼女の姿があった。


「なんで…?」


考えても考えても、思考がついていかない。


「藤崎くん、ごめんなさい…」


突然に謝りだした彼女。


「お友達から、全部聞いたの…」


望…あいつ、言うなって言ったのに…


「私、ほんとにひどいこと…」


「謝らないで下さい」


「でも!」


「先輩には笑ってて欲しいから」


「ごめん」


その言葉を口にする度に、目に涙がどんどん溜まる先輩…。


「…だからもう、謝らないで下さい」


彼女の頬に一筋伝った雫…。

誰にも見えないように、そっと抱き寄せた。


「ごめんなさい。これで最後にするから…」


今だけ、今日だけ…

これで君に近付くのも、最後。

だから、今だけその温もりを、俺の物にさせて下さい…。


「先輩には幸せになって欲しいから…」


「藤崎くん…」


「だから…、」


――さようなら…――

先輩に背を向け歩き出す。

彼女の涙で濡れた胸元が、やけに冷たかった。