「よかったん?あの男の人といい感じになってまうかもしらんのに…」


ご飯を食べながら望に言われた。


「良くはないけど…」


俺は、入学式のあの日、一瞬だけ見せられた先輩のあの笑顔に惚れたわけで…

俺が不利になろうと笑顔になって欲しくて。


「竜聖はほんま、真面目よな」


「…やろ?」


好きになってもうたんやし。
そんな考えも自然と出てくるやん。


「今頃どうなってんのかなー?二人」


なんか、俺より望の方がそわそわしてて…

変に落ち着いてる俺って、先輩のこと…好きちゃうんかな?

次の日、いつも通り昼に望と食堂におったら、


「藤崎くん!」


先輩から声をかけられた。

…濱田さんと、一緒に。


「あの、昨日は、ごめんなさい…」


おどおどしたり、困ったりしてる先輩って想像出来なかったから。

不謹慎にも、愛おしくて…


「ええっすよ、全然」


「藤崎くんも、見たかったやんな?」


眉を下げ問いてくるから、


「俺は、大丈夫です。こいつに謝ってあげてください」


「なっ…」


「俺は、こいつに誘われただけなんで」


そう言うと望と向き合った先輩。


「ほんまにごめんなさい…」


望と先輩が話している間に、


「藤崎くん」


濱田さんに声をかけられた。


「昨日はほんまに悪かった、ありがとう」


爽やかに笑うその人は、俺と違ってお兄さんな感じ。


「でも、君のおかげで、彼女ともうまくいったわ」


…え?それって…


「感謝してるで?」


「いえ、俺は、何も…」


付き合った…って、ことやんな?

胸がズシンと重くなった。

やっぱり、好きやったんやな…。

でも、先輩が濱田さんと付き合うのが幸せなら、絶対邪魔はしたない。

男らしく、潔く、諦めよう…。