心臓がうるさい。

起きればいいのに、何故私は返事をしなかったのか。


目を閉じて、自分は馬鹿だと心底思う。


「寝てる……か」


私の後ろで止まった足音。
独り言の様に呟いた雄大の声。


私にゆっくりと布団をかけてくれた雄大は、私の髪に指を入れ、数回髪をといた。




雄大が家に来るのは珍しくも何ともない。

寝る前には無かった缶ジュースが机にあったり、冷蔵庫の物が増えていたり。

寝てるときに来たであろう、雄大が残して帰る痕跡もある日も。


だけど今日は、慶太郎の言葉が心臓をこれでもかという程に煩くしていた。



「はあ……」


後ろで聞こえた溜め息は雄大のもの。
思わず体が反応しそうになった。