『麻衣か……?』



ちょっと……いや、かなり。

予想はしていた。



期待に近かったかもしれない。



「うん……」



その声は少し前まで、当たり前に聞いていたもの。

いつも私のピンチには居てくれるのに。


勝ち気でムカつくやつなのに。


以前の様に名前を呼ばれただけで。

酷く懐かしく感じた。



『慶太郎くんと話せたみたいだな』

「うん」


クラスは同じで、ただ席替えをしただけ。
話さなくなったのは自分がそうしたのに。

コンビニで会った時だって。大丈夫だったのに。



そんな声で呼ばれたら……



私はいつの間にこんなに気持ちを持ってかれる様になったんだろう。




『俺もう逃げねえから。お前ももう逃げるな』



弱いくせに上から目線なんだもん。



「祐也のくせに……っ」



私の言葉に、見えてないけど祐也は電話の向こうで笑ってるのが息遣いで分かった。