悲劇のヒロインなんて自分には程遠くて。

自己中心的な考えもいいとこ。


それがバレるのが怖くて、裸女にかこつけて私は逃げたんだ。

だから……


「みんなといれなくなっちゃったのは、雄大のせいじゃない。怖いのは私なの」


家を出た時もそう。

お母さんや雄大から逃げられるって言う安心感は確かにあったけど、一番ホッとしたのはやっと一人で泣ける場所が出来たから。


気を使わなくて良かったから。

お母さんを守りたかったなんて建前で、私はいつも逃げてばかりなんだ。


だから自分の心の蓋を誰かに開けられそうになると、せっかく伸ばされた手を払い除けて、蓋に重しを乗せる。


ポタポタ。

ポタポタ。


落ちる雫が重なりあい、涙を拭うことはせずに居た私に、慶太郎は……