「雄大は美咲さんを……」
その先は、どうしても言葉が出なかった。
慶太郎の腕がピクリと動く。
声は……発してこない。
「最低だと思った。一番卑怯だって。でも一番に感じたのは自分の心の矛盾だった」
「……」
「みんな必死に雄大から私を守ってくれるのにって。祐也が雄大に殴られたのを見たのは、きっかけに過ぎないの。私はそれでも雄大を心底嫌いになれない」
みんなの事は大好きだ。
雄大がもし本当に裸女に手を出せば、私は絶対に許せない。
でも許せないイコール嫌いとは違う気がしたんだ。
「みんなを大好きだから、嫌いになりたいのに……っ」
絞り出した声は、涙と共に溢れ出て。
玄関に涙の雫が垂れる。
ポタポタと落ちるそれは、きっと私の汚い心。
綺麗な涙なんて流せる様な人間じゃない。