「あんまり見るな。」

司の声で我にかえる。

「ごめん。」

その時、電車のゆれによろける。
司がささえてくれる。

「トロっ。コケんなよ。」

「ちょっとよろけただけだし。」

「しゃーねーな。」

司がうでをあたしの肩にまわして引き寄せる。

「降りるまでこうしてろ。」

「ちょっ、恥ずかしいんだけど。」

「コケると、もっと恥ずかしいぞ。」

悔しいけど、たしかに。
あたしは、うつむくしかなかった。