去年の暮れ。
NBNがメジャーデビューを発表した。
と、同時に正月に路上からの応援していたファン限定50名に、サイン会が催される事になった。
あたしがNBNを知ったのは、たまたま塾の帰り路に歌っている姿を見かけて、毎晩親が迎えにくるまでの時間つぶしに応援していた。
しかしだんだんと、彼らの歌に励まされたり、恋の詩に共感したりして、半年でどっぷりはまってしまった。
だから、親に頼み込んで正月は早朝から並んで、なんとか50名に入りこんだ。

NBNのメンバーから、CDにメッセージも書こうか?って聞かれたとき、司の顔が浮かんできて、とっさにメッセージも入れてもらった。
「YESを聴かせて。くるみより。」
NBNの楽曲のひとつで、それにかけて司に告白しようとしたのだ。
もちろんその楽曲はCDに収められていて、その告白ソングは聴けば必ず気持ちが届くと、メンバーも応援してくれた。
丁寧に包装して、当日告白できない可能性も考えてカードも添えた。

そして、迎えた当日。

「これ、司、誕生日でしょ。」

「なに?」

「CD、NBNの。」

「ふーん。サンキュー。」

司の反応は薄く、あっさりと告白する気持ちを折られてしまった。
また、渡した場所もよくなかった。
登校してきた司に、下駄箱まえで焦って渡してしまった。
司はささっと、カバンにしまうと教室へ行ってしまった。

あたしは、告白出来なかったことを悔やんだが、なかのカードをみればなにかしらのアクションが司からあると、期待していた。