『いいえー。3人でーす。』

そう王子と声を合わせて応えたのは、安藤さんだった。
ポカンとするあたしを、ゴンドラに押し込めて、王子と安藤さんが乗りこんできた。
ゴンドラの中はあたし、となりに王子、向かいに安藤さんという奇妙なメンバー構成となった。

「いやー。くるみ、あたしずっと後ろからついてきてたのに、全然気がつかないんだもん。逆に驚きだわっ!」

「そりゃ僕に夢中だから。」

サラリと言う王子に、呆れ顔で、言ってろ!って毒づく彼女をまじまじと、見つめてしまう。

「なに?そのほうけた顔は?あたし、邪魔しにきたんじゃないのよ。この王子に頼まれて記録係として来たんだからね。」

「記録係?」

なにそれ?と、聞く前に王子が答える。

「初彼女記念を記録してもらおうと思って。」

記念?記録?そういうのって自撮りとかじゃないの?他の人に撮ってもらうもの?
戸惑うあたしを気にすること無く、安藤さんがスマホを向ける。

「ハーイ!じゃあ、初カノ記念撮影するよー。もっと、寄り添ってー!ゆびハート!」

異様なゴンドラのなかで、シャッター音だけが響いていた。