じりじりと、順番が迫ってくる。
逃げだしたいのに、なかば意地になって、並んでいる。

「羽柴のこと考えてる?」

そう問われてドキッとした。

「か、考えてない。」

「ふーん。よかった。」

ホントに?と言わんばかりに、あたしの顔を覗き込む。

「彼女にほかの男こと考えながら居られるのなんてたまんないから…。」

しまった。と、
とっさに思ってしまった。
司のことは考えては無かったけど、逃げ出せるチャンスだったかも。

列が進んでとうとう、前のカップルがゴンドラに消えていく。

「なんか、緊張してきたね。」

そう耳元で囁かれたとき、トビラを開けたゴンドラが目の前にあった。
グイグイ手を引っ張られ、ゴンドラに乗り込む直前、係員から声がかかる。

「お二人様ですか?」