そんなあたしの事を、気遣うように王子が覗き込む。

「大丈夫?高所恐怖症だった?」

首をふるあたしの頬に、つないでいない方の手を添えて、上を向かされてそのまま固定されてしまった。

「知ってる?この観覧車の都市伝説。頂上でキスしたカップルは、わかれないんだって。」

にっこりと微笑んで王子が、意味深げに親指で唇をなぞる。
あたしは、硬直して王子から目を逸らすことができないまま、曖昧に笑う。

「あれ?乗り気じゃないね。」

「ってか、砂原君、そんな人だったっけ?いつも、もっと…。」

『やさしいのに…。』と言葉には出さずに、そっと、王子の手から逃げる。

「僕は優しくしないよ。甘やかしもしない。彼女にはね。」

頬から離れた手はそのままだったけど、反対の恋人つなぎをぎゅっと握り強められた。

王子が好きなら舞い上がってしまいそうなセリフだけど、あたしには最後通告のように聞こえる。

ホントに彼女になりたいの?

そんな風に言われてるみたいだ。