司がなにか言いかけたとき、インターホンが鳴り響く。
司は残ったアイスをかきこむと、「とにかく帰れ」そう言って玄関に降りて行ってしまった。

(帰れったって、玄関通らなきゃ帰れないじゃん)

あたしは、かかえてたプリントを司の机におく。
部屋を出ようと、ドアノブに手をかけたとき、すごーく嫌な感じがした。
階下から聞こえるのは、あの彼女の声。
司の声は途切れ途切れにしか聞こえないが、どうも押されている感じ。
『案外押しに弱いかも』まなみの言葉がリフレインする。
だから帰れって言ったのかも。
彼女が来るから?
あたしは、急に苦しくなってきた。
司が彼女を連れてきたら?
あたしは、どうしたらいいんだろう?
心臓が早鐘のように鳴り響く。

玄関でしばらくやりとりしているような声が続いて、やがてドア閉まる音がした。
すると階段を上がってくる足音が。

ドアが開くと、司が顔をのぞかせる。

「なんて顔してんだ。」

「…。」

「ほら、ケーキもらったから一緒に食べよ。」

見ると手に有名ケーキショップの箱を持ってる。
学校から司の家とは反対方向にある店のものだ。