姫川とドーナツ屋に行く。


(嬉しそうな顔しやがって)
「姫ってそんなにドーナツ好きなの?」
「うん! ね、早く入ろ!」

俺の袖を引っ張り店内に入っていく。
ショーケースに陳列されているドーナツをキラキラした目で見つめている姫川。

「綾、好きなの頼んでいいぞ。買ってやる」
「えぇ! わるいよ…」
「いいから。俺先に頼むぞ」
「うん」

悩んでいる姫川の顔を横目で見ながら店員に注文する。

「決まったか?」
「…ねぇ、どっちにしよう…」
「両方頼めよ。半分ずつ食えばいいだろ?」
「史葵くんありがとう」

姫川の分を注文し、トレイを持って席につく。
こうやって2人でゆっくり過ごす時間は至福だ。

(自分が思ってるよりも綾のこと好きなんだよな…)

最初は可愛いし、男だけど別にいいかなっていう考えだった。

「史葵くん、はいあ〜ん」
「……」
「ほら! 口開けてよ」
「あー」

口を開けると一口大にちぎられたドーナツを入れられた。
それを大人しく噛み飲み込む。

「おいし?」
「うまいよ」

周りの目なんて気にせずに二人の世界に入っていた。
すると後ろから声をかけられた。

「アレ? 史葵何してんだここで」

そこにはウェイターの格好をした男の人とスーツ姿の男の人がいた。

「大樹先輩に竜成?」
「史葵先輩! 食いに来てたんっすね」
「ああ…」
「んじゃ、俺達は行くな? 由羽待たせてっし」
「はい。また」
「またな。連れの子もまたね
ほらお前は仕事に戻れよ、店長によろしく言っといてな」
「わかった。史葵先輩たちもごゆっくり〜」

竜成と大樹先輩はそれだけを言い残して去っていった。

「ねぇ、史葵くん。
あの人達って高校の時の知り合いなの?」
「高校の時にジャズ部に入っててその時の先輩と後輩」
「ジャズ部って音楽の…だよね?」
「それ以外に何があんだよw」


姫川は時々天然発言をする。
それが可愛くて仕方ない!
本人には言わないけどなw