それから席まで運んでくれた。


席に着いてから私は水を一口口に含んで、息を吐く。


「落ち着いた?」


碧依さんが頭を撫でながら聞いてくれた。


私が頷くと、優しく微笑む。


「優月は可愛いよ。コクったのも俺だし、無理矢理付き合ってもらってるのはむしろ俺の方だよ」


真剣な顔で、碧依さんは吉野さんに言ってくれた。


でもね、碧依さん。


1つだけ間違ってるよ。


私が碧依さんと付き合ってるのは無理矢理なんかじゃないよ。


碧依さんのこと大好きだもん。


愛してるもん。


“愛してる”はまだ口に出来ないから、碧依さんの手をぎゅっと握った。


もしかしたら、繋いだ手から気持ちが伝わっちゃうかもね…。


「ほら、実」


神林さんの声に、私は吉野さんを見た。


「はぁ…」


と1つ息を吐く吉野さん。


「ごめんなさいね。なんか…悔しくなっちゃったの。私も藤堂くんと付き合ってたことあるけどこんなに大事にされてなかったのよ?」


「余計なことまで言わんでいい!」


吉野さんが話してくれたあと、碧依さんが慌てたように言う。


何に慌ててるかはわかんないけどね。