堪えきれずに涙が溢れる。


声が聞こえないように、口を両手で押さえながら壁に寄り掛かった。


ズルズルとしゃがみ込むと、トイレにやってきた女のお客さんが


「どうしたの?!大丈夫?!」


って声を掛けてくれた。


その声に気付いたのか、碧依さんは走って私のとこまで来てくれた。


泣き顔を隠しながら、声が出ないように我慢する。


「今の話し聞こえてたよな。ごめんな…」


顔は見えないけど、今のはきっと神林さんの声だ。


頭の上には大きくて温かい手。


頭を軽く撫でられたあと、ぎゅっと抱きしめられた。


優しい腕…。


大好きな人の腕の中…。


甘い匂いが私を包んでくれる。


喉の奥は相変わらず熱くて痛いけど、涙は段々と治まってきた。


フワッと体が浮いて、そっと目を開けると、碧依さんに抱き上げられてることに気付く。


いつもだったら恥ずかしくて


「降ろして!」


って言ってるだろうけど、今は碧依さんにくっついていたい。


今離れたら、また泣いてしまいそうだから。


「すいません。ありがとうございました」


私を見つけてくれた人に碧依さんはお礼を言った。