「何年も日本に帰らなかったのは、この家に寄りつきたくなかったからなんです。日本にいると息苦しくなる…と、よく言われてましたから…」


剛さんの代わりに、おばあちゃんがグラタンを食べてた。
その姿を見ていた仁さんは、さっきのお申し出についてですが…と声を発した。


「有難いとは思いますが、やはり祖母を貴女に任せる道理はありません。剛の恋人なのかもしれないが、まだ結婚を前提にお付き合いされてるわけでも無さそうだ。
…そんな方にこの家に入られては困る。久城の家は私達にとっても大切な財産です。
祖母にはきちんとした世話役を雇いますから、ご心配なさらずに、どうぞお引取りを願います」


完全にシャットダウンされた。

この場に剛さんがいたら、きっと援護してくれただろうに。


言い返す言葉が見つからない。


私は、やはり部外者なんだーーー。






「結華ちゃん…」


グラタンを食べてたおばあちゃんが名前を呼んだ。
呼ばれた結華さんは面倒くさそうに「なぁに?」と返事した。



「…はい、あーん!」


グラタンの乗ったスプーンが、あたしの方に向けられた。


「おばあちゃん⁉︎ 結華は私よ!」


本物の結華さんが怒った。
おばあちゃんはそちらをちらりと向いて、ううん…と頭を横に振った。


「結華ちゃんはこっち!可愛くていつもニコニコとしてるもの。お姉さんみたいに怒ったりしないの。兄弟思いの優しい子なんだから」