一歩テーブルに近付いた。
大きく息を吐いて前を見る。
五人の大人達に向かって掛ける言葉は、これまでは絶対に言えなかったことだ。


「だから、どうかこの家でおばあちゃんと一緒に暮らさせて下さい。
二度と帰ってこない大切な日々を、おばあちゃんの思い出が残るこの家で過ごさせてあげたいんです。
皆さんにもご協力して頂くことになるとは思います。でも、今のように嫌々ながらの面倒をおかけすることはありません。
たまに此処へ帰って頂いて、おばあちゃんの相手をしてくださればいい。一時の快楽にしかならないにしても、混乱や不安の中で過ごすよりもずっとマシです!
…どうかお願いです!おばあちゃんとの同居を許して下さい!見守らせて下さいっ!この場所で……!」



出過ぎたことを言ってるのは承知の上。理解もされないと思う。

ーー現に剛さん以外の人は、何故あんたに…という顔をしてる。



仁さんが鋭い視線で睨んでる。

怖いくらいだけど、あたしは逃げたりしない。


…おばあちゃんの為に頑張る。

剛さんが好きだからここにいる。



…二人を癒していきたい。


大切な時間を一緒に過ごしたい…。



皆を笑顔にして…



皆で、幸せになるんだーーー。




ーーーごくん…と唾を呑み込んだ。

動きのなかった人達の中で、仁さんが最初に手を動かした。