…皆さんは愛されてる。お料理を通じて、一番大切な『人を思う気持ち』を教えてもらってるんだな…と思いました…」


偉そうに言える立場ではないことは分かってる。
…でも、おばあちゃんはいつも真剣に料理に向かってた。


包丁を握る手が震えて、危なっかしい時もあった。
足下がよろついてるのに、お鍋を離さない時もあった。


頭の中には、常にお孫さん達のことしかなかった。
一生懸命に子育てしてこられたんだな…と、頭が下がる一方だった。


「他人のあたしが見ても、おばあちゃんは立派な人だと思います。
こんな素敵な人なのに、家族の間をたらい回しにされて生活してる。それが不憫でなりません。
あたしは赤の他人だけど、おばあちゃんはもっと皆に愛されていいと思います。
親じゃないけど、親以上に良くしてくれた人なんだから、もっと大切にされてもいいと思います…!」


泣き出しそうになって、泣いたらダメだ…と気を引き締めた。

まだ大事なことを頼んでない。

これから話すことが、何より一番言いたいことだ。



「皆さんがどうしてもおばあちゃんと一緒に暮らせないと言うのなら、あたしが一緒に生活します。
あたしは介護の経験としては皆さんよりもあるつもりです。認知症についても理解は出来る方だと思うし、何よりもおばあちゃんのことが大好きです。
一緒に居ると勉強になるし、大事なことを多く教えてもらえる。
そういう気持ちがある限り、誰よりもおばあちゃんのことを大切に見守れると思うんです…」