「じゃあ行ってくるね、ありがとう」
そう言って車から降りようとすると、腕を引っ張られ、後頭部を抑えられた。
ああ、またか。
なんとも言えない複雑な気持ちを胸に口づけを交わす。
なんだろう、この儀式感。
断ったら駄目なんだろうなって。
まあ一瞬だし別にいいかって。
小さい頃夢に見たキスはこんなものだったのかな。
「行ってらっしゃい、迎えもきてあげるね」
なんだろう。
この、拒否権のない感じ。
「別にいいよ?無理しなく」
「なに?会いたくない?きてほしくない?」
言葉を遮られて見ると、また不機嫌そうに私を見つめる彼。
「ううん、会いたい。じゃあバイト終わったらまた連絡いれるね」
彼氏ってなんだろう。
ああ、寂しさ紛らわすための、
ーー相手【道具】か。